第4回(2019年)審査結果&講評

 コンクールでしか伸びないもの。フラメンコは人と競うものではないから、今いる場所から自分で一つ一つ進んでいくために、このコンクールを利用してほしい。終演後フアンが言ったように、ここで踊ったということ自体がそれぞれの賞でありますように。。。

 

優勝    2番 島村志野

Juan Polvillo賞    5番 新美左智子  

大田ゆう子賞      9番 宮崎美香 

神谷真弓賞          5番 新美左智子 

石川慶子賞          3番 伊藤美紀

観客賞                  5番 新美左智子 

≪大田ゆう子講評≫

① 那須敬子さん

冒頭から勢いがあり、ムイフラメンカ。 ご自分の世界観をしっかり持っており、やりたいことが伝わってきた。ただ感情だけでなく、身体的なもの(体幹、軸、インナーでの体のコントロール)も 勉強していくと踊りに説得力が出てくるかと。

顔の表情がオーバー。もっと自然に。動き出すと猫背が気になる。常に上体を引き上げ胸を高く意識するとダイナミックな身体がより輝くかと思います。

 ②島村志野さん

サリーダで会場の空気をぐっと掴んだ。立ち姿&アバニコさばきが美しく、エレガンテ。とても雰囲気が良い。舞台を大きく使って表現できている。曲の最後まで集中力が切れていないのが良い。サパテアードの際、身体の上下の揺れが気になる。全体を通して、ブラソがふにゃふにゃと動きすぎる。肘の研究を。

③ 伊藤美紀さん

表情が良い。ムイフラメンカな雰囲気。勢いのあるレマーテ、ジャマーダが気持ちいい。レマーテで腰が引ける箇所がありもったいない。外側でなく内側(内圧、インナー、丹田)のコントロールを研究してみてください。舞台の使い方の研究を(センター以外の空間や奥行きも利用してみてください)。曲終盤のブレリアでテンションダウンされたのが残念でした。最後にテンションをMaxにもっていけるようイメージしながら練習してみてください。

④ 橋爪潤子さん

立ち姿&姿勢が良い。足が強く、最後までテンションが落ちない。ソレアの歌ぶりでカンテに寄り添って踊ってみえたのが好印象。ブエルタの強化。肘の位置の研究を。レマーテで腰が抜ける。体幹の研究強化を。エスコビージャが一本調子に強すぎる。歌うように強弱をつけて奏でてみてください。

⑤ 新美左智子さん

冒頭から、強い存在感と美しさに惹きつけられました。立ち姿、ブラソ、マノが美しい。ソレアのコンパスの理解研究を。特に歌ぶりでコンパスが所々区切れるのが気になる。レマーテ等強く動く瞬間だけでなく、その前後からコンパスを繋げて動けると良い。動いていても動いてなくてもコンパスが流れるように。内側の強化を。全ての動きを外ではなく内側から出せると説得力が出て深い表現ができるかと。

⑥ 高尾優子さん

自然でキュートな笑顔が良い。メイク&衣装&選曲としっかり自分自身を熟知されており研究が感じられた(これはとても大事なことで難しいことなので)。マノ、ブラソ、マントン,バタ捌きが美しく余裕がある。シエレのポーズが似通っているのが残念。美しさは際立っているが、フラメンコ的要素、アイレ、ペジスコが感じられない。溜があるとより良い。コンパスを操るには動的要素だけでなく静的要素(静止)が不可欠。まずはカンテをもっと聞いてみてください。

⑦ 伊織会那さん

独特の雰囲気が魅力的。序盤でミスをしたと思われたが、立て直してやりきったところが良い。その強い気持ちを感情だけでなく、身体的要素でも表現できると説得力が出て深みが増すかと。手足の力でなく、体幹(特にお腹)で。身体を一つの塊にして動くようにしてみてください。エスコビージャの際、コンパスが怪しくなる。コントラのサパテアードの際、口をパクパクしているのが気になった。

⑧ 平光賀世さん

凛とした美しさを持っている。表情が自然で良い。冒頭のソレアのジャマーダ、不自然に感じた。マノ(手のひら)が縮こまっている。レマーテ、エスコビージャ共にピエの音が欠けるのは、身体の中心軸が定まっておらず、常に上下に揺れるからかと。土踏まずが大地をとらえる感覚。大地をしっかり押してこその引き上げ。身体の筋肉関節共に伸ばす感覚(空気人形のイメージ)を備えてこそペソが生まれることを研究してみてください。

⑨ 宮崎美香さん

衣装&メイク共に素敵。身体の外側だけでなく中からの動き、叫びが聞こえた。ピエ、リンピオで強い。ご自分の世界感をしっかり持っている。終盤にかけてテンションが増幅していき、また想いがしっかり感じられ、ただただ心に響きました。上半身(胸の引き上げ、肘、ブラソ)の研究強化してみてください。

 

≪神谷真弓講評≫ 

①那須敬子 アレグリアス
大きな身体に合ったダイナミックな踊りが魅力的。トップバッターということもあり、前半少し固さが目立ちましたが中盤のタパの部分辺りから持ち味が出ていたと。性格が表れるような踊り方で好感が持てました、このまま良いところがなくならないようにして技術的な所を磨いていって欲しいです。
②島村志野 グワヒーラ
出だしのファルセータからしっかり雰囲気を掴み終始振り付けを自分の言葉、踊りにしていた。アバニコや細かい身体使い、ブエルタの安定など技術的にも不安要素がなかった。1つ、衣装でエプロンを着用していましたが振り付けの雰囲気と合っていたかな?と個人的には思いましたが全体的な完成度は抜群でプレミオだったと思います。
③伊藤美紀 バンベーラ
ジャマーダや止まる箇所で何回か不自然に少し揺れたり動く感じが勿体無い。マノやブラソの使い方が独特でそれが魅力だと感じる時と、気になってしまう時とある。レマーテで抜けた後の11,12が少し遅れたりするので10のレマーテの振りでコンパスが切れてしまう様に感じるのでコンパスはずっとまわっている意識をより強く持つと良いのかなと思います。
④橋爪潤子 ソレア
ブラソがあがると一緒に腰の位置もあがってしまっている。細くて長い身体でいかに重さのある、ペソを感じさせるマルカールが出来るか考えてみて下さい。ファルダの持ち方、ブエルタのまわっている最中に頭が起きてしまうなど細かいところをもう少し気を回せたら。
⑤新美左智子 ソレア
出てきた時の存在感、ソレアのレトラ、マノの使い方は重厚感がありかつ丁寧で好感が持てる踊り。このまま行くかな?と思うと中盤~後半にむけての盛り上がりが足りなく失速気味な印象に。ジャマーダでブレリアのレトラを呼ぶところなどは振り付けをきっちり踊ることも大事ですが、自分の中から呼ぶテンションが見えないといけないですしソレアの2つめレトラも1つめと同じように踊らない。今の丁寧さ、ひたむきさを持ちつつ場面の抑揚の揚の部分を出すことを、1つ考えて踊ると更に良くなるかと思います。☆神谷賞推薦☆

⑥高尾優子 アレグリアス

ただただひとこと、華がある!!振り付けや衣装、構成などが彼女の雰囲気に合っていてポーズで止まる度に思わず「ole!!」が出てしまう。ただ、だからこそ少し無難な感じも否めない。バタとマントンのフラメンコのole! な瞬間とソレアやシギリージャの様な曲のole! と感ずる所はなかなか同じとは思えず、故にコンクルソで優越をつけるのは本当に難しい事だなと個人的には思います。
⑦伊織会那 シギリージャ
足音の正確さ、ブエルタなど全体的に技術が足りないかなと思う箇所がありました。コンパスやメトロノームを流して一定の速度で練習するなど地味で地道なところをもう少しやると良いと思うのと、外側のエネルギーが強い印象を受けましたが、それらが中から出ているものになるとまた変わってくるのかなと感じました。
⑧平光賀世 ソレア
マルカールやブラソが軽い。まだ振り付けを踊っている様に見えます。ブラソのあげかたひとつ、マルカールの一歩をどう出るか、伸びしろ沢山だと思います。考えて、感じて、自分のものにしていって下さい。
⑨宮崎美香 シギリージャ
出だしマルティネーテのタパ部分やマルカールも難解で細かいニュアンスのものが多く、そこにチャレンジしている精神は素晴らしい。けれど、故に粗も目立ちやすいのかなと。振り付けに思い入れがあれば、やり続けて自分のものにするのもありだし、どっしり踊る所なども取り入れて自分らしい踊りを追究するのも良いかと思います。これからが更に楽しみな方だなと思います!

 

≪石川慶子講評≫

 ①那須敬子 アレグリアス

前回出場時にあった生命力が消え、体の芯が弱く、肘が下がりお尻が出ている。レマーテが構成の肝になりえない。そのため全体的に一本調子となる。バックとコンタクトを取り、きちんと指示が出せる強さがある一方、キャラクター(個性)があるのに、自分を信じきれていない。

②島村志野 グアヒーラ

サリーダから優雅な出だし。が、緊張しているのか、口があかなく窮屈な印象。1歌と2歌の違いや、ドブレのコンテスタシオンなど、全体的に必然性が見えない。グアヒーラの背景の解釈や、引き付ける力がもう少し欲しい。と欲張りにも思ってしまうのは、技術的にもほとんど完璧に、丁寧に踊り切ったから。次はどこか破綻する魅力が見たい。もっと自身に貪欲になってよいのでは。

③伊藤美紀 バンベーラ(☆石川慶子賞に選抜☆)

本人の個性にアンティグア(古風)な曲がとてもよくあっている。次に何が来るか終始期待感があり、全体を通してストーリーがあった。ただ、しっかりと静止できるところがなく(体幹が弱い)、コンパスが10で尻切れてしまうのが残念。メイクも改善の余地あり。

④橋爪潤子 ソレア

抑えた強さと美しい出だし。気持ちが伝わってくる。ただ、曲が始まる前に舞台に出てしまったり、後半笑いすぎてしまったりと、地も出ている。舞台人としての感情の共有を目標に。技術的には回転時の肩の上り、レマーテまでの溜め、ペソなどまだまだやることがある。

⑤新美左智子 ソレア

美しく強いソレア。長いブラソを生かした表現と、反対にしっかりした体幹が生むペソが魅力。ただ、足音が汚く、2歌のレマーテなど、必然性に欠け、爆発力に欠ける。優等生の踊りより、作り上げたものをromper(壊す)しながら、それでも損なわれない個性を見たい。

⑥高尾優子 アレグリアス

舞台に乗った瞬間に大輪の花が咲き誇った。これだけで勝ったも同然だったが、だんだんと飽きてくるのはフラメンコ力のなさが原因。美しいだけではフラメンコにならない。バタの高さにももっと変化がほしい。後半、ブレリアス・デ・カディスの雰囲気は再考してください。肩の力を抜き、マノ(指)の動きの先の先までアレグリアスを宿すこと。

⑦伊織会那 シギリージャ

際立った個性と表現力がある。伝えたいことは見えるのに、手段(技術)を持たない。身体の芯や、ブラソ、レマーテの強化を。口の動きが気になった。メイクや髪形もエスティ―ロを感じない。セビージャ、へレス、グラナダなど、根を持たない私たち日本人だからこそお手本と理想をしっかり決めてみるといい。シギリージャのマチョにはちょっとやそっとではたどり着けない。

⑧平光賀世 ソレア

印象的な始まり。前々回よりも着実に上達している。ただ、それは技術だけのこと。2年前には確かにあった個性が均されて何も感じない。技術的には、足音をリンピオに、ペソを中心に、尻切れにならないように、ファルダを上げすぎないように。独りよがりの踊りでは人を引き付ける力は生まれてこない。

⑨宮崎美香 シギリージャ

マルティネーテで動かない勇気がほしい。聴いていたらその足の音質が歌とあわないと躊躇してしまうはず。しかし昨年から考えればその成長具合(フラメンコ理解力)と感情の発露に涙が出てきた。優勝に推したかった反面、まだ決定的に足りないものがある。マチョ前で失速した。

 

全体を通して。私が見たいのはその人の本質なんだなぁと強く感じた回でした。完璧に、優雅に、美しくを目指したいけど、それだけじゃなくて、昇華しきれない狂気、叫び、そして破綻。そんな人間としての黒さ、自然さが見たいと思いました。プロじゃないからこそできる、高校球児のような泥臭さを、また来年楽しみにしています!陣痛中に書いたので厳しめになってすいません!

 


第4回「名古屋未来のフラメンココンクール」×ライブ「PRINCIPITO vol.5」

2019.1.27()

 

1800開場 1830開演

 

限定80名 ¥4,500

第一部 1830

 第四回「名古屋未来のフラメンココンクール」

 レッスンで伸びる、発表会で伸びる、そしてコンクールでしか伸びないものもある。新人公演やマルワは無理だけど、何か目標を持って頑張りたい方。特に、ソロで踊りたい方が対象。

 

◇審査基準:各審査員に一任。技術、フラメンコ性、表現力など、審査員がいいと思った人を独断と偏見で選びます。選ばれなかった人にも、全員に審査員の先生から講評が届きます。ぜひ今後の参考にしてください。

  ◇審査員:Juan Polvillo、石川慶子、大田ゆう子、神谷真弓、観客の皆さま 

◇賞:

優勝 ESUDIO KEIKO3回生徒公演ソロ出演+個人3時間無料

 

Juan Polvillo クルシージョ無料受講

石川慶子賞 オープンクラス3時間無料+個人2時間無料

大田ゆう子  

   神谷真弓賞  

 観客賞   特選フラメンコグッズ

◇参加費 ¥12,000+チケット10

(オフィシャルアーティストを申し込む場合は別途エンサジョ代)

◇自由曲1曲(7分以内)。CD、テープ等による参加は認められ                                  ません。 

◇参加申し込み 

090-9906-6533(石川)、EstudioKeiko2012@gmail.com